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【闘病】「なんで私が?」 膝の僅かな違和感から始まった「多発性硬化症」(2/2ページ)

 更新日:2025/04/16
【闘病】「なんで私が?」 膝の僅かな違和感から始まった「多発性硬化症」

10年以上「再発なし」自分の姿が多くの人の励みになれば

10年以上「再発なし」自分の姿が多くの人の励みになれば

編集部編集部

16年前に発症されてから、現在はどのように過ごしているのですか?

Yuri SaitoYuriさん

多発性硬化症と診断されてから、入院中、退院後も再発予防薬の投与が続いたのですが、繰り返しの投与で皮膚の色素沈着や皮膚の硬化が現れたので、6年ほど前に薬が別の再発予防薬であるアボネックスに変更されました。現在もアボネックスを定期的に投与していますが、私の場合はその後の再発はありません。長時間歩くと足がこわばったり、ウートフ現象(体温上昇で一時的に神経症状が表れる)があったり、疲れが取れにくかったりしますが、それ以外は健常者と同様の生活ができています。

編集部編集部

仕事やほかにも色々な活動をされているそうですね。

Yuri SaitoYuriさん

発症当時は飲食店の立ち仕事でしたが、身体の負担を考えて時間を減らすなどの対応をしていました。現在は事務職として正社員勤務をしながら、インナービューティープランナーとしても活動しています。腸内環境を整えることも大事だと知って、SNSでインナービューティーダイエットを活かした食生活やお弁当レシピを投稿しています。日々の活動を紹介しているので、もしよければ見てもらえると嬉しいです(プロフィール参照)。

編集部編集部

Yuriさんにとって、治療中に心の支えになったものはなんですか?

Yuri SaitoYuriさん

入院中の母の言葉、そして友人からの言葉です。私は1歳半のころに当時症例の少なく珍しい病気に罹ったのですが、運よく病気について知っている医師に出会えたことで完治できました。母はその事実もあったので、「あなたは運がいいから大丈夫。絶対に再発はしない」と力強く励ましてくれました。また、友人からは毎年恒例の食事会で「もしも車椅子生活になっても、階段や段差で困ったときはおんぶしてあげるから大丈夫」と言ってくれて嬉しかったです。

編集部編集部

もしも昔の自分に声を掛けられるなら、どんな言葉を掛けますか?

Yuri SaitoYuriさん

「もっと自分の身体を大切にして」ですね。発症当時は仕事で責任ある立場だったことと、責任感が強い性格が災いして、仕事を休んで病院に行くという決断ができずにいました。むしろ入院が決まったときですら、仕事に行こうとしていたほどです。ですが、仕事は代わりの人がいても、自分の身体は自分しか守れないことを知りました。そういう学びを得たという意味では、良い機会だったと言えるかもしれません。

編集部編集部

多発性硬化症という病気と、この病気を知らない人に伝えたいことは何でしょうか?

Yuri SaitoYuriさん

多発性硬化症は再発と寛解(病状が落ち着くこと)を繰り返します。たとえ今日が寛解状態でも、明日には再発していてもおかしくありません。他人から見た目は健康に見えていても、身体にだるさを感じていることや不調を抱えている場合もあります。周囲の人には、そうした本人の辛さを理解していただけると嬉しいです。現在はヘルプマークの認知が少しずつ広がっていて、難病や身体に不自由を抱えている人が街中や電車内で身に付けていることもあります。ヘルプマークを付けている人が困っているのを近くで見かけたら、席を譲る、道を譲るなどをしていただけると助かることもあるので、そういう場面に出くわしたらお気遣いをお願いします。

編集部編集部

最後に本記事の読者向けにメッセージをお願いします。

Yuri SaitoYuriさん

多発性硬化症の患者さん以外にも、「病気だから……」と色々と諦めていることがあるかもしれません。私自身がそうでした。ですが、同時に病気になって気付けたこと、病気になったからこそ出会えた人もいて、決してマイナスだけではありませんでした。過去は変えられませんが、今に目を向けて、今の自分だからこそできることを探してこれからの人生を楽しんでいきましょう。

編集部まとめ

多発性硬化症はわずかな違和感から始まるため、「気のせいかな」と軽く考えてしまいがち。しかし、早期にしっかり治療することでYuriさんのように長年再発を抑え、自分のやりたいことをできるようにもなる人もいるようです。また、見た目ではわからなくてもヘルプマークを持ち、困っている人は身近にいるかもしれません。もしもそうした人が近くにいたら、自分に出来ることはないか声を掛けてみてください。気恥ずかしさがあり、勇気のいる行動ですが、一人の行動が周りの人の意識の変化にも繋がるのではないでしょうか。

この記事の監修医師

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