【植物油vsバター】がん死亡リスクに明暗…体に悪い“食用油”はどっち? ハーバード大の分析結果

日々の食卓でよく使う「油」。バターと植物油、健康に悪いのはどちらかご存じですか? アメリカのハーバード大学の研究員らは、バターおよび植物油の摂取量と全死亡率・がん死亡率・心血管疾患(CVD)死亡率との関連性を調査しました。この内容について中路医師に伺いました。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
研究グループが発表した内容とは?
ハーバード大学の研究員らが発表した内容を教えてください。
中路先生
アメリカのハーバード大学の研究員らは、バターや植物油の摂取と死亡率の関連性の調査結果を発表しました。研究は「看護師健康研究」などのアメリカの3つの大規模コホートのデータを用い、がんや心血管疾患、糖尿病などに罹患していない成人22万人超を最大33年間にわたり追跡したものです。
食事内容は4年ごとの質問票に基づいて評価され、バターや植物油の摂取量ごとに分類・分析されました。その結果、バターを多く摂取している人は、そうでない人と比べて全死亡リスクが15%、がんによる死亡リスクは12%高いことがわかりました。一方で、オリーブ油やキャノーラ油などの植物油を多く摂る人は、全死亡リスクが16%、がんや心疾患による死亡リスクも低下していました。特に、バター10g/日を同量の植物油に置き換えると、全死亡率・がん死亡率がいずれも約17%減少するという推定結果が得られています。
この研究結果は、観察研究であるため因果関係の断定はできず、今後の介入研究やさらなる検証が求められる点には留意が必要です。
食用油を選ぶ際の注意点とは?
体に良い油・悪い油の違いはなんですか? 食用油を選ぶ際の注意点を教えてください。
中路先生
体に良い油とは、オメガ3脂肪酸を多く含む亜麻仁油やエゴマ油、青魚の油などで、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らす効果があり、現代人に不足しているため積極的に摂りたい油です。適度に摂りたい油には、コーン油や大豆油などのオメガ6脂肪酸を含む油がありますが、摂りすぎると健康リスクがあるため、注意が必要です。逆に、肉や乳製品、パーム油などの飽和脂肪酸を多く含む油や、マーガリン・ショートニングに含まれるトランス脂肪酸は、摂りすぎると心疾患のリスクが高まるため、できる限り控えましょう。
食用油を購入する際は「酸化しにくい」「小さいボトルサイズ」「用途に合ったもの」を選ぶことが大切です。健康的な食生活のために、油の種類と使い方に気を配りながら選びましょう。
研究内容への受け止めは?
ハーバード大学の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。
中路先生
「バターを植物油に置き換えることで死亡のリスクが下がる」というこの研究結果は、我々の日常の食事習慣を見直す良い契機になると思います。たしかに、バターなどの飽和脂肪を控え、植物油のような不飽和脂肪を増やすことは、過去の別の研究でも健康的とされており、実践する価値はあると考えます。しかし、食事習慣の変化が集中力や体調にどれほど影響するかは個人差があります。また、その影響の程度は個人の体質や食生活によって大きく異なります。したがって、この研究結果は「日常の食事の習慣を少し意識するだけで、健康へのリスクを下げられる」と受け止めた方がいいと思われます。体調や嗜好に合わせ、無理をせずに取り入れてみましょう。
編集部まとめ
ハーバード大学の研究によると、バターの多量摂取は死亡リスクを高め、オリーブ油やキャノーラ油などの植物油への置き換えでリスク低下が示されました。日常的に使う油だからこそ、体に良いものを選ぶことが大切です。健康維持のためにも、油の種類や使い方を見直してみましょう。