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「四十肩と五十肩の違い」はご存知ですか?それぞれの症状も解説!【医師監修】

 公開日:2025/04/22
「四十肩と五十肩の違い」はご存知ですか?それぞれの症状も解説!【医師監修】

肩が痛くて腕が上がらない、以前より腕が上げにくくなったなど肩に関するお悩みを抱える方は少なくありません。

肩の痛みは、洗濯物を干す・髪を結ぶといった日常生活に支障をきたすことがあります。

このような症状は一般的に四十肩や五十肩と呼ばれ、この言葉を耳にした方も多いことでしょう。

この記事では、四十肩・五十肩の違いや症状・原因・予防法などをわかりやすく解説します。肩の痛みで日常生活に困っている方のお役に立てれば幸いです。

松繁 治

監修医師
松繁 治(医師)

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経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医

四十肩と五十肩の違いは?

肩痛い

四十肩と五十肩の違いを教えてください。

結論からいうと、四十肩も五十肩も同じものです。これらは一般的な呼び方で、医学的な呼び方ではありません。医師や看護師、作業療法士・理学療法士は四十肩・五十肩という言葉を使いません。日本整形外科学会では、四十肩・五十肩を肩関節周囲炎といいます。肩関節周囲炎は、肩関節周囲に著しい痛みや腕の可動範囲が著しく低下した場合に病名としても付けられます。そのため、医療機関で四十肩・五十肩という病名が付くことはありません。50歳未満で発症すると四十肩、50歳以上では五十肩と呼ばれる傾向があります。

四十肩・五十肩の原因を教えてください。

肩関節周囲炎の原因は明らかになっていません。外傷などの何らかのきっかけで、肩に痛みや可動域制限が生じることもありますが、それは外傷性の腱板断裂などほかの疾患が疑われることがあります。肩関節周囲炎は、外傷性・非外傷性問わず、肩関節を構成する靭帯・筋肉・関節包などが何らかの原因で炎症を起こし肩の痛みを生じたり、柔軟性が低下して腕の上げにくくなる疾患です。

四十肩・五十肩になりやすいのはどのような方ですか?

肩関節周囲炎になりやすい方には、次のような特徴があります。

  • 肩甲骨マルアライメント(不良肢位)
  • 薬指・小指の筋力が低い

肩甲骨マルアライメントとは、肩甲骨が正常な位置からずれ、脊柱の中心より外側に偏る状態を指します。肩甲骨は背中にありますが、ほかの骨と関節で連結されていないために、不安定です。猫背の影響や上肢に負担のかかる作業を長期間続けるなどにより、肩甲骨の位置が偏移します。また、肩甲骨を背中の適切な位置に保持するための筋肉の筋力低下によっても肩甲骨マルアライメントは生じるといわれています。腕は、肩関節のみで動いているわけではなく、肩甲骨との相互作用(肩甲上腕リズム)によってスムーズに動くようになっていることはあまり知られていません。肩甲骨マルアライメントにより、この相互作用に不均衡が生じると肩関節の靭帯や関節包に負担が生じ、痛みを引き起こします。薬指と小指の筋力が低いことも、肩関節に負担をかける原因となり、肩関節周囲炎になりやすい肩の特徴の一つです。薬指・小指の筋力が低いと日常生活の動作は、親指・人差し指・中指の筋力に頼ってしまうことになります。この3指を強く使うと上腕骨は内旋位(内巻き)になりやすいです。また、前腕(肘~手首)も回内位(内巻き)になりやすく、肩関節に負担をかけることになります。上腕骨や前腕がこの状態で腕を上げると、上腕骨頭が肩甲骨とぶつかり(インピンジメント症候群)痛みを生じる原因になります。

四十肩・五十肩の症状

ポイント

四十肩・五十肩はどのような症状が出ますか?

肩関節周囲炎は大きく3つの病気に分類することができます。

  • 炎症期
  • 拘縮期
  • 回復期

まず、炎症期は肩関節周囲炎の初期の段階で痛みが強い時期です。安静時痛や夜間痛が特徴的な症状です。夜間痛は痛みのために眠れなかったり、中途覚醒してしまったりするためQOL(生活の質)の低下にもつながります。また、自分で動かしたときに生じる自動運動時痛や人が腕を動かして生じる他動運動時痛も認められるようになります。拘縮期は、徐々に腕が上げにくくなっていき可動域が制限される時期です。痛みが軽減してくる場合もありますが、痛みが残存するケースもあり日常生活に大きな支障をきたします。
回復期は、痛みの軽減や可動域の拡大し症状が改善してくる時期です。夜間痛も落ち着き、積極的にストレッチや運動、リハビリテーションを行うことが推奨されます。

四十肩・五十肩をセルフチェックする方法を教えてください。

肩関節周囲炎のセルフチェックを紹介します。

  • 肩関節の疼痛の有無
  • 肩関節の関節可動域

肩関節の疼痛の有無の確認は、日常生活上で肩に痛みがあるかどうかを確認します。例えば、安静時にも痛みがある、または寝ている最中に目が覚めるほどの強い痛みがある場合です。肩の可動域は、両手を上に上げた場合にどちらか一方だけが明らかに上がりにくいなどを確認しましょう。

四十肩・五十肩を放置するとどうなりますか?

肩関節周囲炎は、適切な治療を行わないと痛みが長引くことや可動域制限が残存することがあります。特にひどい場合には凍結肩になり、この治療はとても難渋するケースが多いといわれています。腕を上げることだけでなく、後ろに手を回すことも難しくなりエプロンの紐が結びにくくなったり、ベルトを通しにくくなったりすることもあります。凍結肩にも、肩関節周囲炎と同じように薬物療法やリハビリテーションなどが行われますが、改善がみられない場合は手術適応となることが少なくありません。

四十肩・五十肩の治療法や効果的なストレッチ方法

ストレッチ

四十肩・五十肩で医療機関へ行く目安を教えてください。

肩関節周囲炎が疑われるような痛みや可動域の低下が気になった場合には、すぐに医療機関を受診しましょう。肩の痛みだけでなく、よい方の腕と比べて腕が上がりにくいといった症状も肩関節周囲炎の初期症状です。早めに対処することが重要です。治療が遅れれば遅れるほど、症状の改善を図ることが難しくなってしまいます。

四十肩・五十肩は何科に相談すればよいですか?

肩の痛みや動かしにくさを感じたら整形外科を受診しましょう。肩専門の医師が診察する場合もあります。整形外科医のなかには肩・肘を専門とする医師もいます。注射や鎮痛剤など薬物療法での治療方法に対してなど専門性の高い治療を受けることができます。また、症状がひどく手術に至った場合でも適切な医療機関へ紹介してくれる可能性が高いです。

四十肩・五十肩の医療機関での治療法を教えてください。

肩関節周囲炎の治療法を以下に紹介します。

  • 薬物療法
  • リハビリテーション
  • 手術療法

薬物療法では、注射や内服、湿布などが処方されます。湿布には炎症を抑える作用があり、これにより肩関節周囲炎の痛みを抑えることができます。湿布の効果は一般的に1日程度です。適切に使用しましょう。リハビリテーションでは、作業療法士・理学療法士によって運動療法や徒手療法、物理療法が行われます。専門の知識や技術を持った作業療法士・理学療法士が治療を行います。作業療法士・理学療法士の指導のもと、ストレッチや必要な機能を補うための筋力トレーニングを行うのが運動療法です。徒手療法は作業療法士・理学療法士が、硬くなった筋肉や靭帯などに対してストレッチやモビライゼーション(マッサージ)を行い、肩関節の柔軟性を改善し、痛みの緩和や可動域の拡大を図ります。手術療法では主に2種類の手術方法があり、ブロック注射での麻酔下で行うサイレント・マニピュレーションと全身麻酔で行う肩関節鏡視下授動術です。サイレント・マニピュレーションは、超音波(エコー)ガイド下で肩周囲の知覚に関する神経に麻酔をかけます。麻酔により、肩関節が痛みが引いてから医師が腕をゆっくり動かし、硬くなった関節包や靭帯を徒手的にはがしていきます。これにより、拘縮が改善するのです。肩関節鏡視下授動術は、硬くなった部分を内視鏡を使って確認しながら専用のハサミを使って切り込みをいれて肩関節の可動域の拡大を図ります。サイレント・マニピュレーションも肩関節授動術も、手術後にリハビリテーションと併用することでより効果が得られやすいです。

自分でできる四十肩・五十肩に効果的なストレッチ方法を教えてください。

肩関節周囲炎になってしまった場合、痛みや可動域制限のためになかなか積極的に自分自身でストレッチを行うことは難しいです。そのため、症状が生じる前から日常的にストレッチなど健康管理をすることが望ましいといえます。肩甲骨マルアライメントや猫背などの不良姿勢は肩関節に負担をかけます。そのため、普段から胸郭や肩甲骨のストレッチを行いましょう。また、長時間の座位での作業や同一姿勢での作業は、不良姿勢を助長するため適度な休憩をはさんで行うとよいでしょう。

編集部まとめ

マッサージする人

肩の痛みや可動域制限で睡眠不足になったり、日常生活で支障が生じたりする方は大勢いることでしょう。

四十肩・五十肩は肩関節周囲炎と呼ばれ、肩の痛みや可動域制限を伴う運動器疾患です。

肩の症状が気になる場合には、すぐに整形外科を受診しましょう。一般的な治療は、薬物療法・リハビリテーション・手術療法です。放置すると凍結肩となり、治療が難しくなるケースもあります。リハビリテーションなど適切な治療を早めに受けることが推奨されます。

この記事の監修医師

OSZAR »