「幻覚を発症すると現れる症状」はご存知ですか?錯覚との違いも解説!

幻覚を起こしている患者さんの世界では、実際には起こっていないことが現実に起こっていると感じています。
それに対して苦痛を感じたり、恐怖感を抱いたりして辛い思いをしています。
幻覚の治療には、患者さんはもちろん、家族やパートナーの理解・協力が欠かせません。
そこで、この記事では、幻覚の症状や特徴・幻覚の原因・幻覚の対応方法・受診のタイミング・発症している方への接し方を解説します。
今後の治療や対応方法についてお役立ていただけますと幸いです。

監修医師:
吉川 博昭(医師)
目次 -INDEX-
幻覚の症状・特徴
幻覚とはどのような状態ですか?
幻覚の症状について教えてください。
- 幻視:そこにいないはずの物体が見えてしまう
- 幻聴:誰も話してないのに声が聞こえてくる
- 幻味:食べていないのに味がする
- 幻臭:自分の身体から異臭がする
- 幻触:誰かに触られたように感じる
- 体感幻覚:脳が溶けるような感じがする
幻覚を発症している方によって症状は異なります。そのため、上記のほかにも多種多様な症状を自覚する場合も珍しくありません。
幻覚は錯覚とはどう違うのでしょうか?
幻覚の症状は自然に収まりますか?
幻覚の症状を引き起こす原因・治療法
幻覚の症状を引き起こす原因を教えてください。
- ボトムアップ系・トップダウン系の障害
- 予測誤差をつかさどる部位の機能不全
- 自己モニタリング障害
- 軽度の意識障害
ボトムアップ系は感覚器官から受け取った情報を脳へと伝える伝達経路です。トップダウン系は受け取った情報を記憶と照らし合わせ、感覚として知覚するシステムです。
これら二つはお互いの均衡を保つように働いていて、ボトムアップ系の機能が低下するとトップダウン系の補完作用により、心象が知覚化されやすくなります。
結果として、感覚を受け取っていなくても心象が知覚化されて幻覚が発生するのです。
また、てんかんのようにボトムアップ系が正常に作動していてもトップダウン系のみが異常興奮し、幻覚が誘発されるケースもあります。
脳には「行動をしたいが、これまでの経験からこうなるのではないか」というように結果を前もって予測し、外れたときは修正を加えて、次の行動に備えるための機能が備わっています。
その予測と実際に起こった誤差を修正する動作に関与しているのがドパミンです。このドパミンが過剰に放出されると修正する機能が正常に作動しなくなり、幻覚が発生します。
自分が行ったことを自分が主体で行ったと正しく識別するシステムが自己モニタリングです。その手段として用いられるのが遠心性コピーという機能です。
例えば視線を動かしたとします。そのとき眼に映る物体は動いて見えます。ただ、これに対して私たちは「物体が動いたのではなく、自分が眼を動かしたから物体が動いたように見えた」と認識するはずです。
理由は遠心性コピーによって感覚野へ視線を動かしたという予測情報が入ることで、「視線を動かしたら物体が動いて見えた、けどこれは視線を動かしたからである」と知覚できたからです。
しかし、統合失調症の方の場合、遠心性コピーが歪んでしまっています。
そのため自分が小声で話していた会話に対して、自分が言葉を発したという予測情報が出せず、声が聞こえたという感覚のみを受け取るかたちとなります。
そのため自分が小声で話していた言葉が幻聴となって聞こえてしまうのです。まどろんでいるため、夢か現実かが識別できず、幻覚としてとらえてしまいます。
幻覚の症状を引き起こしやすい病気はありますか?
- 精神系疾患:統合失調症・器質性精神障害・アルコール依存症・薬物依存症
- 神経系疾患:認知症(レビー小体型認知症・アルツハイマー型認知症)・てんかん・パーキンソン病・脳委縮
- その他:双極性障害・ナルコレプシー
幻覚が生じたときの治療法を教えてください。
- 薬物治療
- 心理社会的治療
薬物治療では向精神薬を内服し、精神状態をコントロールします。向精神薬に分類されるドパミン拮抗薬には、統合失調症の原因であるドパミン過剰に対して効果があり、幻覚症状を抑えることが期待できます。またてんかん発作を抑えることもできる治療薬です。心理的社会的治療は病気と向き合い、自己管理の方法を身につけることでストレスへの対処方法を習得する超療法です。そうすることで、うつ病や不安症などの改善が期待できます。また、社会生活機能のレベル低下を防ぐことも目的とした治療法です。
幻覚が出てきたときの受診タイミング
幻覚が出てきたときの受診タイミングを教えてください。
幻覚は完治や寛解はしますか?
幻覚を発症している方への接し方はありますか?
幻覚を軽減するためにできることはありますか?
編集部まとめ
幻覚には幻視・幻聴・幻味・幻臭・幻触・体感幻覚の6つの症状があります。早期の治療が必要です。
主な原因は以下の4つの説が有力です。
- 感覚の伝達経路であるボトムアップ系、受け取った感覚を処理するトップダウン系に異常が出てしまっている
- ドパミンの過剰放出によって、予測誤差の修正に失敗する
- 予測誤差の修正ができないことで、自分の発した声が自分の声と認識できなくなり、幻聴と認識する
- 軽度の意識障害で夢か現実かの区別がつかない
症状があらわれる原因は上記の4つだとしても、幻覚を引き起こす疾患は多岐にわたります。そのため、幻覚を発症している方が身近にいる場合、早期の診療機関への受診が望まれます。
そして疾患に合った適切な治療を受けることが大切です。治療には家族やパートナーの理解や協力が欠かせません。
幻覚を発症している方への対応方法として、強く否定しないこと、寄り添って不安にさせないようにすることが大事です。
認知症の高齢者は部屋が薄暗いと、影や光の加減を誤認し、幻覚を体験することがあります。そのため、部屋を明るく保ち、安心感を与えることが重要です。