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「大腸がんの手術費用」はご存知ですか?ステージ別の治療法も医師が解説!

 公開日:2025/05/19
「大腸がんの手術費用」はご存知ですか?ステージ別の治療法も医師が解説!

大腸がんの手術費用とは?Medical DOC監修医が大腸がんの手術費用や入院費用・主な手術内容・ステージ別の治療法などを解説します。

齋藤 雄佑

監修医師
齋藤 雄佑(医師)

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日本大学医学部を卒業。消化器外科を専門とし、現在は消化器外科、消化器内科、産業医を中心に診療を行っている。現在は岩切病院、永仁会病院に勤務。
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。

「大腸がん」とは?

大腸がんは日本で患者数の多いがんの一つです。治療にあたっては手術が中心となりますが、費用や入院期間、治療内容はがんのステージや手術方法によって異なります。本記事では大腸がんの手術費用や入院費用の目安を、手術法ごとに内容とそれぞれのメリット・デメリット、さらにステージ別の治療方針について、分かりやすく解説します。

大腸がんの手術費用

日本の公的医療保険では、大腸がん治療の自己負担は1〜3割が基本です。後に詳細に解説しますが、内視鏡的治療の場合は、入院期間が短く、6万円〜20万円ほどの医療費が発生し、3割負担で2万円〜7万円程度の自己負担額です。また大腸がんの外科手術+入院にかかる医療費は、総額約64〜78万円程度で、自己負担額はその3割とすると19万円〜25万円程度です。これは手術から入院中の検査・薬剤などを含めた平均値であり、症例や病院によって上下します。また、がんのステージによって手術に加えて術後抗がん剤治療を行った場合などは、自己負担額の総額がさらに増えることも予想されます。
 日本では高額療養費制度により高額な医療費がかかった場合でも、月々の自己負担額の上限額が設定されます。例えば月収(標準報酬月額)が約28万〜50万円程度の方の場合、1ヶ月の自己負担上限は約9万円前後です​。そのため長期入院や高額な治療を受けても、月ごとの自己負担は一定額までに抑えられます。ただし、高額療養費制度の対象とならない差額ベッド代(個室料)や食事代、先進医療費用、入院中の日用品費などは別途自己負担となります。

大腸がんの主な手術内容

内視鏡的切除

内視鏡的切除はお腹を切る手術ではなく、肛門から入れる大腸カメラを使ってポリープやがんを取り除く手術です。大腸がんの多くはポリープから発生すると言われるため、ポリープの段階で切除しておくことが大腸がん予防にもなります。がんが粘膜下層のごく浅い部分までの浸潤にとどまる場合には内視鏡でがん病変を一括切除できることがあります​。内視鏡で完全に切除でき、リンパ節転移を起こしにくい病変は内視鏡的切除の適応です。内視鏡的切除は30分〜1時間程度で終了します。小さなポリープなら日帰りも可能ですが、切除後の出血リスクを考えて1〜3日程度入院することもあります。内視鏡的切除のメリットはお腹を切らずに済むため、痛みもほとんどなく回復が非常に早い点です。高齢者や持病がある方でも比較的安全に施行できます。またポリープや早期がんだけを切除するので大腸そのものを温存できます。排便障害など術後の生活への影響もほぼありません。内視鏡的切除のデメリットはがんが粘膜までに留まっているごく早期の段階に限り有効な治療であることです。それ以上に進行している場合は外科的手術が必要です。また手術の合併症として大腸に穴が開く(穿孔)ことや出血が起こる可能性があります。

開腹手術

開腹手術は、お腹を切開して直接臓器を見ながら行う従来からの手術方法​で通常、おへその上下にかけて20cmほどお腹を縦に切開しておこないます​。腹部を大きく開いて行うため、術者が直接患部を手で触れて確認でき、広い術野で作業できる利点があります。手術内容はがんのある腸管とその周囲のリンパ節を切除し、残った腸をつなぐ(吻合)というものです。
 開腹手術のメリットは過去に複数回手術をしており、腹部の癒着が想定される方や緊急でがんの手術を行わなければ行けない方など、幅広い症例に対応可能である点です。また直接臓器​でしこりを触知しながら行えるため、切除範囲を確認がしやすいなどの利点があります。また他の手術と違い内視鏡の装置や器具などが不要であり、規模によらずに標準的な手術が行われやすいというメリットがあります。開腹手術のデメリットは腹部の切開が大きいために術後の痛みが強くなったり、腹筋を大きく切るので筋力の回復にも時間がかかります。傷跡も大きく残り美容的観点のメリットがあります。

腹腔鏡手術

腹腔鏡手術とは、お腹に小さな穴を数カ​か所開けて腹腔鏡と呼ばれるカメラと手術器具を挿入し、体内をモニター映像で見ながらがんを切除する手術方法です​。開腹手術のようにお腹を大きく切り開かずに済むため、身体への負担が少ないことが特徴です​。5〜12mm程度の小さな傷を4〜5カ所と、腫瘍を取り出すための3〜5cm程度の切開を1カ所設けて手術を行います​。お腹に二酸化炭素ガスを入れて膨らませ、臓器の周囲に空間を作って手術をします。腹腔鏡下手術では、がんのある腸の部分と周囲のリンパ節を切除し、残った腸同士をつなぎ合わせる処置(吻合術)まで体内で行います。​腹腔鏡補助下手術では、がんの切除や吻合術は体外(開腹)で行います。
 腹腔鏡手術のメリットは創が小さいため術後の回復は早く、術後のリハビリも早期に開始できることです。創部が小さいことで創部感染や癒着性腸閉塞などのリスクも低減します​。 回復が早いため、入院期間が短縮され、退院後早期の社会復帰が期待できます。またカメラによる拡大映像で細部まで観察しながら手術ができ、繊細な操作が行えます​。開腹では見えにくい場所も確認しやすく、出血への対応なども繊細に行える利点があります。​デメリットは開腹手術よりも手術時間や全身麻酔の時間が長くなることがあります。また、手術器具や医師の技術など多くの医療リソースを必要とするため、ある程度規模の大きな医療機関で行われる手術です。

ロボット支援手術


ロボット支援手術は、腹腔鏡手術をロボット技術で発展させた最新の方法です。執刀医は患者さんのそばにある操作台に座ってロボットアームを遠隔操作し、手術を進めます​。基本的には腹腔鏡手術と同様、お腹に小さな穴を開けてカメラや鉗子(手術器具)を挿入して行う低侵襲手術です​。違いは、鉗子などの操作を人間の手ではなくロボットアームが行う点です。入院日数や術後経過は基本的に腹腔鏡手術とほぼ同じと考えてよいでしょう。傷口も小さく痛みも軽いため、多くの場合術後1週間〜10日程度で退院し日常生活に復帰できます。ロボット支援手術のメリットは、ロボットのアーム操作は柔軟であるため狭い骨盤内でも思い通りの角度で操作できます。さらに手ぶれ防止機能や動きを縮小して伝える機能により、繊細で正確な手術が可能です​。繊細な操作は出血量の減少にも繋がります​。ロボット支援手術のデメリットは設備とコストの問題です。手術支援ロボットは非常に高価な医療機器であり、設置している医療機関が限られます。また手術に追加の費用がかかります。ただし日本では2018年より直腸がん手術を含むいくつかの分野でロボット手術が公的保険適用となったため​、自己負担は通常の手術と同様3割で高額療養費制度の適用もあります。

大腸がんのステージ別・治療法

大腸がん・ステージ0の治療法

ステージ0は、がんが粘膜内にとどまっている状態で早期大腸がんとされます。この段階で発見されれば、内視鏡手術が適応です。腹部を切るような外科的手術は不要です。

大腸がん・ステージ1の治療法

ステージⅠは、がんが固有筋層までにとどまるものです。早期大腸がんと進行がんのどちらかの状態です。がんの深さ(深達度)によってさらに細分化され、T1a(がんが粘膜下層までにとどまり、浸潤距離が1000μm未満の早期がん)とT1b(がんが粘膜下層までにとどまり、浸潤距離が1000μm以上の早期がん)、T2(がんが固有筋層に達する進行がん)に分けられます。T1aの場合はリンパ節への転移の可能性は低く、内視鏡手術の適応です。しかし、T1b、T2ではリンパ節に転移する可能性が出てくるため、内視鏡手術ではなく外科的な手術の適応です。

大腸がん・ステージ2の治療法

ステージⅡは、がんが固有筋層を越えて浸潤している進行大腸がんの状態です。この段階では、リンパ節転移のリスクが高まるため、基本的に外科的手術でがんを切除します。

大腸がん・ステージ3の治療法

ステージⅢは、深達度にかかわらずリンパ節転移がある状態です。この段階では、手術に加えて、術後補助化学療法(抗がん剤治療)が必要になることがあります。

大腸がん・ステージ4の治療法

ステージ4は、遠隔転移がある状態です。転移した先の病巣が手術可能な場合は根治を目指した手術を行うこともありますが、切除が難しい場合、根治治療は難しい状況です。治療はがんの進行を抑える抗がん剤治療や免疫治療、症状を緩和することを目的とした放射線療法、緩和医療を行います。

「大腸がんの手術費用」についてよくある質問

ここまで大腸がんの手術費用について紹介しました。ここでは「大腸がんの手術費用」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

大腸がんの手術費用は保険適用になりますか?

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

年齢や手術の種類、入院期間によって異なりますが、保険適用後の自己負担額は平均で20万円前後です。高額療養費制度を利用すれば、1か月の自己負担額(収入に応じて上限額は異なります)を抑えることができます。

大腸がんステージ4の手術費用はどれくらいかかりますか?

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

大腸がんステージ4で手術を行う場合は根治治療を目的としたもの、根治治療ではなく腸閉塞などの症状を抑えるために行う手術法だけでも様々あります。また、ステージ4では緩和医療や抗がん剤治療が中心であることを考えると、手術だけでなく、入院費用は状態によるので、個人差が大きすぎて費用は一概には言えません。ただし、基本的には保険医療で年齢に応じた1〜3割負担で、高額療養費制度の対象にはなりますので、前述の目安が参考になります。

編集部まとめ 大腸がんの治療費用は高額な場合もあるが、助成制度もあり。

大腸がんの治療法はがんの進行度によって大きく異なります。大腸がんの治療費は公的医療保険だけでなく、高額療養費制度など公的支援制度のため、月々の治療費の自己負担は上限額が設けられています。治療法だけでなく、費用面も含め、主治医や病院の相談窓口にご相談ください。

「大腸がん」と関連する病気

「大腸がん」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

良性の疾患も大腸がんのリスクになるものがありますので、気になることがあれば医療機関でご相談ください。

「大腸がん」と関連する症状

「大腸がん」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

大腸がんの症状は様々です。気になる症状は医師にご相談ください。

この記事の監修医師

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