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「血圧の下が低い」原因はご存知ですか?男女別の原因・低いと現れる症状も解説!

 公開日:2025/05/15
「血圧の下が低い」原因はご存知ですか?男女別の原因・低いと現れる症状も解説!

血圧の下が低いのはどうして?Medical DOC監修医が男女別の原因・症状・考えられる病気・予防法などを解説します。

伊藤 陽子

監修医師
伊藤 陽子(医師)

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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。

血圧とは?

血圧とは、心臓から送り出された血液が血管を押す力です。心臓のポンプ機能や血管の状態などを反映する値で、血圧の異常が続くと健康に影響を及ぼす可能性があります。
血圧には2つの値がありますが、今回は血圧の下の値に注目し、考えられる原因や症状、予防法をお話します。

血圧の数値で体の何がわかる?

血圧は、どれくらい血管に圧力がかかっているかを表した数値です。全身の血液循環の状態や、心臓や血管の健康状態を知るための指標となる重要な値で、
心臓から押し出される血液の量、血管の収縮度合い、血管のしなやかさ、といった要素で決まります。
常に一定ではなく、日常生活や運動、ストレス、測定時の姿勢、時間帯などによって変動します。

血圧の測定方法

日本高血圧学会が推奨している血圧の測定法をご紹介します。
静かで適当な室温の環境下で、安静に座った状態で1〜2分休んでから測定します。利き手と反対側の上腕が心臓の高さになるように複数回測定し、平均値をとります。測定中は動いたり話したり、力が入ったりする動きは避けてください。また、測定値に影響が出る可能性を考え、測定前に喫煙、飲酒、カフェインを摂らないようにしましょう。
血圧には、医療機関の診察室で測る「診察室血圧」と、自宅で測る「家庭血圧」の2種類がありますが、基本的にはどちらも測定法は同じです。自宅で測定する場合、朝と夜の1日2回計測し、血圧計は精度検定済みで数値に信頼性が持てる上腕用の血圧計を使いましょう。

診察室血圧は、1日だけでなく別の日にも測定し、複数回の結果を元に判断します。また、家庭血圧は5〜7日間かそれ以上の測定値の平均で判断します。

血圧の上とは?

血圧の「上」は、正式には「収縮期血圧」と呼ばれます。心臓が収縮して血液を全身に送り出す際の、血管に最も圧力がかかっている時の値です。この時、心臓の収縮で大動脈に血液が流れ込み、膨らんだ状態になります。
最近話題になっている「動脈硬化」という言葉をご存知でしょうか?動脈硬化が進んで大動脈が硬くなると、収縮期の膨らみが不十分となって上の血圧が上がります。この状態は「収縮期高血圧」と呼ばれ、重大な病気を引き起こす可能性があります。

血圧の上の基準値

血圧の基準値は年代や性別に関係なく決められており、測定する環境によって正常値に若干差があります。
先ほどご紹介した「診察室血圧」と「家庭血圧」の2種類では、成人の場合、上の血圧は診察室血圧では120mmHg未満、家庭血圧では115mmHg未満が正常血圧とされています。

血圧の上はいくつから高いと判断できる?

血圧の上の値について、診察室血圧では140mmHg、家庭血圧では135mmHgを超えたら「高血圧」と診断されます。
診察室血圧では正常範囲内でも家庭血圧が高血圧の場合、高血圧の判定では家庭血圧が優先です。

一方、「正常値よりも高いものの高血圧と診断されるまでではない」数値は「正常高値血圧」「高値血圧」として分類されています。いわゆる「高血圧予備軍」と考えられ、注意が必要です。

以下に、血圧の上と高血圧の基準をまとめました。

分類 診察室血圧の上 家庭血圧の上
正常血圧(単位:mmHg) <120 <115
正常高値血圧(単位:mmHg) 120–129 115–124
高値血圧(単位:mmHg) 130–139 125–134
高血圧(単位:mmHg) 140≦ 135≦

正常血圧と正常高値血圧では、上の基準だけでなく下の基準も満たすことが条件です。
続いて、血圧の下についてみていきましょう。

血圧の下とは?

血圧の「下」は、正式には「拡張期血圧」と呼ばれます。心臓が拡張する時に血管にかかる圧力です。心臓から送り込まれた血液を溜めていた血管が元に戻り、その間にも血液が送られます。
拡張期血圧は末梢の動脈硬化とともに徐々に上昇します。しかし、さらに動脈硬化が進行して大動脈が拡張できなくなると、心臓の収縮時に大動脈に血液をため込めなくなり、拡張期血圧が低下するようになります。
身体全体に血液を送るため心臓が収縮・拡張するごとに、血圧の「上」と「下」が生まれるのです。

血圧の下の基準値

血圧の下の値は、診察室血圧では80mmHg未満、家庭血圧では75mmHg未満が正常血圧とされています。しかし、夜間では血圧が低めとなり下の血圧が70以上で高値と診断されます。このため、下の血圧が70以下 KWであっても一概に低過ぎるとは言い切れません。

血圧の上と下の差は、正常の場合は40〜60mmHgです。差が開きすぎる場合は心筋梗塞や脳血管疾患のリスクが高くなり、差が少なすぎる場合は心臓のポンプ機能が低下していると考えられます。
上と下どちらかだけを気にするのではなく、両方のバランスが取れていることも大切です。

血圧の下はいくつから高いと判断できる?

血圧の下の値も、上の値と同様に「高血圧予備軍」となる値が定められています。下の値に「正常高値血圧」はなく、「高値血圧」として分類されています。

分類 診察室血圧の下 家庭血圧の下
正常血圧(単位:mmHg) <80 <75
高値血圧(単位:mmHg) 80–89 75–84
高血圧(単位:mmHg) ≧90 ≧85

上の血圧と同じく、正常血圧では、下の基準だけでなく上の基準も満たすことが条件です。

【男性】血圧の下が低い原因

血圧の下が低い原因は、主に血管が硬くなって膨らみにくくなる状態になることです。収縮期血圧が上昇しているにも関わらず、拡張期血圧が低くなった場合には動脈硬化がさらに進行している可能性があるため気をつけなければなりません。
また、このほかに大動脈弁閉鎖不全症という病気でも収縮期血圧が高いにも関わらず拡張期血圧が低くなる現象が起こります。
ここでは、収縮期、拡張期共に低くなる低血圧について解説いたします。
低血圧は「下」や「上」に限らず、大きく本態性、起立性、二次性の3種類に分類されます。原因に合わせた適切な対策が大切です。

本態性低血圧

背景に病気などがないのに血圧が低い場合、本態性低血圧と呼ばれます。遺伝や体質によるものと考えられ、原因となる病気が見つからない場合に診断されます。

適切な血圧を保つには、バランスの良い食生活、適度な運動、十分な睡眠といった規則正しい生活習慣を心がけましょう。

起立性低血圧

自律神経が上手く働かないため、急に立ち上がった時に血管の収縮が十分に行われなくなって起こる低血圧です。血管の収縮が不十分だと心臓のポンプ機能も上手く働かず、身体の下の方に血液がたまってしまいます。
立ちくらみや失神を起こすことがありますが、症状が現れたら横になることで改善します。

二次性低血圧

病気や薬の副作用など、原因がはっきりわかっている低血圧は「二次性低血圧」と呼ばれます。
心筋梗塞、心不全などの心疾患、脳下垂体疾患、神経疾患、出血、塩分不足、下痢、飲酒などが原因として挙げられます。また、降圧剤、利尿薬、抗うつ薬などの薬の服用で生じる可能性もあります。
原因となる病気の治療が優先されますが、原因を特定して治療や薬の調整を行うことが大切です。症状が出た場合、担当医に相談しましょう。

【女性】血圧の下が低い原因

女性の血圧の下が低くなる原因は男性と同じです。
しかし、血圧全般の平均値が男性よりも低い傾向にある、高血圧になりやすい肥満の該当者が男性よりも少ない、といったことを考えると女性の方が低血圧となる傾向があるようです。基本的には原因は男性と同様です。
加えて、女性の場合は女性ホルモンバランスの変化や月経による出血と低血圧の関係も報告されています。また、女性では、中でも甲状腺機能低下症の頻度が高いとわかっており 、妊娠中にも低血圧が起こりやすくなります。これらの女性ならではの原因も含め、低血圧の原因を調べる必要があります。

血圧の下が低いと現れる症状

血圧の下が低い、つまり拡張期血圧の下が低い場合に現れる主な症状をご紹介します。
血圧が高いと「下げましょう」と言われることも多いですが、下がり過ぎも体にとって悪影響です。

立ちくらみ・めまい

一時的に脳の血流量が低下して、くらくらしたり目の前が暗くなったりします。もし立ちくらみが起こったら、無理に動かず足を高くして横になりましょう。
低血圧になると発生しやすく、自律神経の異常や貧血、他の基礎疾患の影響などが原因となります。
頻繁に立ちくらみやめまいが続くようになる、連続して起こるような場合は一度かかりつけの内科を受診しましょう。背景に病気が隠れている可能性があります。

頭痛

低血圧が原因で身体の状態が一定に保てない場合、頭痛が発生することがあります。低血圧の原因を改善するほか、着圧ストッキングや有酸素運動も取り入れた対策が有効と考えられ、必要であれば薬物治療が行われる場合もあります。
頭痛が起こった場合、水分を補給して、足を高くして安静にしてください。
症状がひどい場合は、かかりつけの内科を受診するようにしましょう。

倦怠感

血圧が低いために全身に行き渡る血液の量が減ると、酸素や栄養が行き届かずに倦怠感が現れることがあります。
こちらも低血圧の原因を改善するほか、着圧ストッキングや有酸素運動も取り入れた対策が有効と考えられます。
緊急性はありませんが、日常生活に支障が出る場合は、かかりつけの内科や治療中の病気の担当医に相談しましょう。

吐き気

低血圧で自律神経の乱れや酸素・栄養不足が起こると、吐き気が現れることがあります。安静にして少しずつ水分を補給し、足を高くして安静にしましょう。
こちらも緊急性はありませんが、日常生活に支障が出る場合は、かかりつけの内科や治療中の病気の担当医に相談しましょう。

手足の冷え

低血圧が原因で全身に行き渡る血液の量が減ると、手足が冷えることがあります。この場合、有酸素運動で血行を良くする、温かいものを食べる、自律神経を整える、といった対策が有効です。

血圧の下が低くなりやすい人の特徴

自律神経のバランスが悪い人

低血圧の原因として、自律神経のバランスが崩れていることが挙げられます。ストレスなどが原因のこともあり、ストレスを避け、生活習慣を見直すことも大切です。予防のためには食事や水分をしっかりとり、軽い運動を取り入れて規則正しい生活を心がけましょう。弾性ストッキングの着用も効果的です。
症状が気になるようなら内科を受診してください。必要であれば薬物療法が行われることもあります 。

動脈硬化が起こっている人

前述の通り、血管が硬くなる、つまり動脈硬化が進行すると拡張期血圧は低下する傾向にあります。動脈硬化は加齢によって自然と進行するほか、生活習慣の乱れによって発症しやすいとされています。
高齢者や喫煙者、脂質異常症、糖尿病、メタボリックシンドロームなどを指摘されている人は特に注意が必要です。

二次性低血圧を起こす原因がある人

前述のように、心不全や内分泌疾患、神経疾患といった病気によるものや、服用中の薬による副作用として低血圧になる可能性があります。
症状が気になる場合は、受診の際に担当医に相談しましょう。必要であれば治療や薬の調整が行われます。

体質・遺伝

本態性低血圧の場合、体質や遺伝によるもので原因不明です。改善のためには、規則正しい生活習慣を心がけましょう。
日常生活に支障が出る場合は、かかりつけの内科に相談してください。

若い女性

若い女性は低血圧を起こしやすい、という報告もあります。食事や水分をしっかりとり、軽い運動を取り入れて規則正しい生活を心がけましょう。
日常生活に支障が出る場合は、かかりつけの内科に相談してください。

血圧の下が50以下だと低血圧?

低血圧の基準値は明確に定められていません。正常血圧の基準から考えると、下の血圧が50以下の場合は「低め」であると言えます。ただし、上の血圧が高い場合で、下の血圧が下がってきた時には動脈硬化が進行している可能性があり注意が必要です。
症状がなければ特に治療の必要はない場合も多いですが、下の血圧が50台、40台、30台であれば低血圧と考えて良いでしょう。何らかの症状が現れていないか注意してください。
急激な血圧低下がみられる場合は、病気が隠れている可能性もあります。一度医療機関を受診しましょう。

「血圧の下が低い」状態の特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「血圧の下が低い」に関する病気を紹介します。
どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

大動脈弁閉鎖不全症

心臓から体へ血液を送り出す出口についている弁(大動脈弁)がしっかりと閉まらなくなるために血液が大動脈から左室へ逆流する病気です。この原因は大動脈の硬化、マルファン症候群による大動脈の病気、生まれつきの二尖弁などさまざまです。初期では症状が出にくいです。しかし、進行すると、動悸やめまい、失神などがみられることがあります。
大動脈から血液が逆流するため、1回の心拍出量は多くなり、収縮期血圧は上昇します。一方、大量に血液が末梢血管に流れ込み末梢血管が拡張し拡張期血圧が低下し、収縮期血圧と拡張期血圧の差「脈圧差」が増大するのも特徴です。

起立性低血圧

起立性低血圧は、急に立ち上がった時に十分に血管が収縮せず、身体の下の方に血液がたまってしまうため血圧が下がった状態です。立ちくらみやめまいを起こすことがあります。自律神経の働きがうまくいかないのが原因と考えられており、症状が現れたら横になると改善します。
予防のためには水分や食事を十分にとり、適度な運動を取り入れて規則正しい生活習慣を心がけましょう。弾性ストッキングの着用も効果的です。
症状が気になる場合は内科を受診しましょう。必要なら薬物療法が行われることもあります。

心不全

不整脈や心筋症など、さまざまな原因で心臓が血液を全身に送る働きが弱くなった結果、低血圧が起こる場合があります。適切な治療で症状は改善しますが、心不全そのものは徐々に進行する病気であり、治ることはありません。低血圧のほかに息切れやむくみ、疲れやすさを自覚する場合、一度医療機関を受診しましょう。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能が低下して甲状腺ホルモンの働きが不十分になると、甲状腺機能低下症という状態になります。成人女性の割合が多く、代表的なのは橋本病(慢性甲状腺炎)です。全身の代謝が悪くなりますが、心臓が血液を全身に送る働きが弱まって低血圧になる場合があります。
低血圧のほか、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、便秘などの症状が起こります。例に挙げた症状が気になる場合は、医療機関で相談してもいいでしょう。

自律神経失調症

ストレスやホルモンバランスの悪化などが原因で自律神経が乱れると、血圧の調整が上手くできなくなって低血圧が起こる可能性があります。規則正しい生活習慣を心がけ、散歩や入浴、趣味などでストレス発散を行いましょう。

血圧の下が低くならないための予防法

血圧の下だけ低いからと言ってすぐに対応が必要なわけではありません。血圧自体が低く、症状がある場合には以下のような点に気をつけましょう。

規則正しい生活

十分に睡眠をとり、規則正しい生活を心がけましょう。特に、屋内外の気温差にも注意します。また、たんぱく質をはじめとしたバランスの良い食事を摂りましょう。

適度な運動

血液を体に循環させるためのポンプ機能がきちんと働くように、ふくらはぎの筋肉を鍛えましょう。毎日の散歩や階段の上り下りなどの有酸素運動を行うと効果的です。

ストレスの発散

自律神経を整えるため、趣味や運動などでストレス発散を心がけましょう。リラックスできる楽しい時間、充実感を得られる時間を積極的に持てるようにします。

その他

・起き上がる時など、動作はゆっくり行う
・多めの水分と、適量の塩分を摂取する
といったことも効果的です。

「血圧の下が低い」についてよくある質問

ここまで血圧の下が高いことについて紹介しました。ここでは「血圧の下が高い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

血圧の下がどれくらい低いと危険なのでしょうか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

低血圧の明確な定義はありません。また、下の血圧が低い場合にどの程度危険性があるかについてもはっきりとした結論は出ていません。しかし、上の血圧が高いにも関わらず下の血圧が低い場合には動脈硬化が進行している可能性が考えられます。このような場合には、全身の動脈硬化の評価をする必要があります。心血管系の病気の合併がないかを含め内科で相談をしてみましょう。

編集部まとめ 血圧の下が低い時は、まず生活習慣を見直そう!

血圧の下が低い原因として、体質や遺伝によるものから背景の病気まで、さまざまなものが考えられます。明確に「低血圧」として定義されている値はありませんが、自律神経を整えるために規則正しい生活を心がけましょう。
もし日常生活に支障が出る場合は、かかりつけの内科を受診して相談してください。必要に応じたアドバイスや治療が行われるでしょう。

「血圧」の異常で考えられる病気

「血圧」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器科の病気

内分泌系の病気

腎臓系の病気

脳神経系の病気

血圧の下が低い場合、改善のためには生活習慣の見直しを心がけましょう。日常生活に支障が出る場合、医療機関を受診してください。

この記事の監修医師

OSZAR »