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エビデンスに基づき低身長は安心して治療できる(医師が監修)【東京都文京区 小石川整形外科】

 公開日:2025/05/20

エビデンスに基づき低身長は安心して治療できる(医師が監修)
エビデンスに基づき低身長は安心して治療できる(医師が監修)

「夫婦ともに身長が低いので、子どもも伸びないような気がする」
「スポーツ選手になりたいとは言うけれど、身長が伸びないと選手になれないのでは?」
そんな不安を持つ親御さんは少なくないだろう。かつては「身長が低いのは遺伝だから仕方ない」とあきらめるようなことが多かったが、現在は低身長外来を持つクリニックも増え、医学の力で身長を伸ばすことができるようになっている。では、低身長外来ではどんな治療を行っているのだろうか? 低身長治療に力を入れる「小石川整形外科」の丸山剛先生に解説していただいた。

Doctor’s Profile
丸山 剛(院長)
小石川整形外科

2009年に日本医科大学医学部を卒業後、東京都済生会中央病院の初期臨床医を経て、日本医科大学付属病院整形外科・リウマチ外科入局。その後大洗海岸病院や日本医科大学付属病院、日本医科大学多摩永山病院、日本医科大学千葉北総病院に勤務した後、2018年に本川越病院整形外科医長に就任。2021年7月に小石川整形外科を開業。日本整形外科学会認定整形外科専門医。

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低身長の原因は病気や遺伝、ストレスなどさまざま

子どもの発育には個人差があると思いますが、低身長とはどのように判断されるのでしょうか? 定義などがあれば教えてください

お子さんの身長が同性同年齢の平均身長に比べて極端に低い場合や、伸びる速度が標準よりも遅い場合に、低身長と定義されます。
お子さんの身長が同年齢の平均身長からどのくらい離れているかを示すSDスコアというものがありますが、それが-2SD以下のお子さんは低身長と判断されます。また、年間の身長の伸び率が-1.5SD以下で経過している場合も、低身長と判断されます。

低身長の原因は病気や遺伝、ストレスなどさまざま

低身長の原因にはどのようなものがあるのでしょうか?

低身長の原因はさまざまあって、成長ホルモンに異常が認められるケースがあれば、骨や軟骨、臓器、染色体に異常があるケースもあります。また、特定の病気ではなく、環境やストレスなどの要因によって、身長が伸びなくなるお子さんもいます。
規則正しい生活を送れていなかったり、食生活が乱れたりしていることによっても、身長が伸びにくくなることがあります。
でも、やはりご両親の背が低いといった遺伝的な要因が多いですね。お父さんとお母さんの身長が低いと、お子さんの身長も低くなる可能性は高いです。

低身長の兆しは何歳ぐらいから現れてくるものでしょうか?

それは人によって違います。すごく身長が伸びていたのに、10歳ぐらいでピタッと止まってしまうお子さんもいますし、逆に途中から急激に伸びるお子さんもいます。

低身長治療は何歳から始めたらよいですか?

低身長の治療は、6歳から12歳の間に行うのが望ましいです。よく「あともう少ししたら身長が伸びるかもしれない」と期待して、結局思春期を過ぎても伸びず、それから来院される方がいます。
しかし、低身長治療は、思春期を過ぎて骨が成熟してしまってからではあまり効果が期待できません。伸びないというわけではないのですが、伸びしろがかなり少なくなってしまうということです。

なぜ思春期を過ぎると、低身長治療の効果が期待できなくなるのでしょうか?

お子さんの身長が伸びるためには、成長ホルモンが大きな役割を果たしています。成長期の骨には「骨端線」と呼ばれる軟骨組織があるのですが、この軟骨組織が成長ホルモンによって増殖することで、骨が伸びる仕組みになっています。
そのため、低身長のお子さんに成長ホルモンを投与することによって、骨の成長や身長の伸びを促すというのが、低身長治療の方法です。
ところが、この骨端線は女性が14歳、男性が15歳ぐらいになると閉じてしまうため、いったん閉じてしまってから成長ホルモンを投与しても、治療効果が望めなくなります。そのため、開始年齢はできるだけ早い方がよいのです。その伸びしろが最も大きい時期が、6歳から12歳ということです。

低身長の原因は病気や遺伝、ストレスなどさまざま

低身長のお子さんを持つ親御さんは、わが子の日常生活において、どんな点に注意を払っていたらよいでしょうか?

まず、規則正しい生活をすることが大切です。適度な運動と十分な睡眠をとり、栄養バランスのよい食事を心がけましょう。精神的なストレスがたまらないようにすることも大切です。

お子さん自身が「身長を伸ばしたい」と望んでいることが大切

お子さん自身が「身長を伸ばしたい」と望んでいることが大切

貴院における低身長治療の流れを教えてください

当院にご来院いただいたら、まずは問診を行います。そのときに、分かる範囲で結構なのですが、ホームページからダウンロードできる表がございますので、当院来院前にお子さんが書いて来ていただけますと助かります。
問診が終わったらレントゲン検査を行い、骨端線の開き具合を確認します。これはその日にお見せすることができます。血液検査や尿検査も行い、さまざまな項目を詳しく調べた上で、後日またご来院いただきます。
成長ホルモン治療の適応があると判断された場合は、そのときに今後の治療についてご相談となります。その後はご自宅で毎日1回、夜寝る前に成長ホルモンの注射を行います。1カ月に1回定期的に受診していただき、治療効果を観たり注射の量を調節したりしながら、治療を続けていきます。遠方から来られる方は慣れてきたら3ヶ月分などおまとめして処方することも可能です。

治療期間はどのくらいですか?

人によってさまざまですが、3カ月ぐらいで反応が出るお子さんが多いので、少なくとも3カ月ぐらいは続けていただきたいですね。もちろん強制するものではありませんので、どこまでやるかはご家族でよく話し合っていただければと思います。

成長ホルモンを投与することで、お子さんの身体に影響はないのでしょうか?

成長ホルモンと聞くと、不安に感じる親御さんもいらっしゃるかもしれませんが、ホルモンを打つこと自体は珍しい治療法ではありません。定期的に採血をして、値が基準値を超えていないかどうかをしっかりと確認しながらやっていきますので、正常範囲内であればまったく問題ありません。
少なめのホルモンを少しずつ足していくようなやり方なので、当院では何例もやっていますが、現時点で副作用の事例はなく安心な治療法といえます。

低身長を治療する場合、保険の適用は可能でしょうか? 適用条件はなかなか厳しいと聞きました。通常は保険外治療となりますか?

はい。低身長治療は保険が適用となるケースもありますが、そもそも病気でないお子さんは適用になりませんし、SDの数値は-2SD以下でなければならず、なおかつ負荷試験などをした上で保険適用となります。そのため、低身長治療を受けられるお子さんの多くは、自費診療となります。

治療に際して、先生が一番重視されている点は何でしょうか?

子どもさんや親御さんと、治療に対する意識を共有することですね。6歳から12歳ぐらいがすごく身長が伸びる時期なので、その年齢で低身長治療を行うのがベストなのですが、やはりそこは子どもさんがどう思っているかということが大事になってきます。
たとえば親御さんが過去に低身長で悩まれて、精神的に苦しんだ過去があるようなときは、親御さんとしては治療を受けさせたいというお気持ちがあります。でも、お子さん自体は身長が低いことをあまり気にしていないような場合、治療が続かなくなるケースもあります。
逆にお子さんが身長を伸ばしたいと思っていても、金銭的には親御さんの協力なしには無理ですので、その点もきちんと確認する必要があります。その辺の意識の共有を行うことは、とても大事だと思っています。

お子さん自身が「身長を伸ばしたい」と望んでいることが大切

遺伝的な低身長でも、医学の力で身長は安全に伸ばせる

遺伝的な低身長でも、医学の力で身長は安全に伸ばせる

貴院で低身長の治療を行う場合の費用を教えてください

10mgの注射キットを、当院は1本60,000円(税込)で提供しています。針や消毒のためのアルコール綿なども、その料金に含まれます。低身長治療を行う場合、どのクリニックもほぼ同じキットを使用しますが、その中でも当院は価格に配慮してご提供しています。
お子さんの体重によって、1回に使うキットの本数が違いますので、トータルでいくらかかるかというのはお伝えするのが難しいところです。たとえば小学生なら、1カ月12万円~38万円(税込)、トータルで100万円~200万円(税込)ほどかかると思っていただけたらいいのではないでしょうか。

遺伝的な低身長でも、医学の力で身長は安全に伸ばせる

低身長治療の効果は、どのくらいの期間で出てきますか?

これはもう人によってさまざまで、すぐに反応するお子さんもいれば、1~2カ月目では反応しないけれど3カ月目に反応するお子さん、それ以上に時間がかかってゆっくり反応するお子さんもいます。
平均的な治療期間というものがないので、どこまで続けるかは、お子さんと親御さんのお気持ち次第です。ただ、先ほども申し上げたように、できれば3カ月以上は続けることをおすすめしています。

最後に、低身長治療を受けようと考えている方や、Medical DOCのサイトを訪れている読者に対して、メッセージをいただけますか?

今の時代は遺伝的な低身長であっても、医学の力で安心して、しかもきちんとエビデンスに基づいて身長を伸ばすことができます。ただし、年齢的に遅くなってしまうと反応が薄くなってしまいますので、できれば6歳から12歳ぐらいのうちに一度ご相談いただければと思います。

編集部まとめ

低身長治療はまだ一般的には広まっていませんが、少しずつ認知度が上がってきており、対応するクリニックの数も増えてきています。今回の丸山先生のお話から、低身長治療はエビデンスに基づいた安心できる治療法であることが理解できました。治療の方法も自宅での注射が基本なので、辛い手術などをする必要もありません。もしお子さんが「背が高くなりたい」という希望を持っているなら、骨端線が開いている6歳から12歳までの間に、治療を検討してみてはいかがでしょうか。

小石川整形外科

医院名

小石川整形外科

診療内容

低身長外来 小児整形外科 スポーツ整形 など

所在地

東京都文京区小石川1丁目5番1号
パークコート文京小石川 ザ タワー3階

アクセス

都営地下鉄各線「春日」駅より徒歩1分
東京メトロ各線「後楽園」駅より徒歩3分
JR中央・総武線「水道橋」駅より徒歩12分

この記事の監修医師

OSZAR »