「パニック障害の治療法」はご存知ですか?【医師監修】
公開日:2025/04/08

電車の中や人混みの中などで急に不安や動悸・めまいに襲われ、死ぬのではないかと恐怖感を覚えるパニック発作が繰り返し起こるとパニック障害と診断される場合があります。
パニック障害は患者さんにとって大変つらいものです。周囲の方の患者さんへのいたわりと寄り添いが大切ですが、そこで元気づけようといった言葉がかえって患者さんの負担になるかもしれません。
この記事ではパニック障害の治療法を解説します。
※この記事はMedical DOCにて『「パニック障害の人に言ってはいけない言葉」はご存知ですか?【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
パニック障害の治療法
パニック障害のセルフチェック方法を教えてください。
ほかの方にはなんでもないような、電車の中・長いトンネル・人混みの中などで突然不安・おびえ・息苦しさを感じる場合にはパニック障害である可能性があります。その状況下で以下のように感じるのでしたら特に注意が必要です。
- 動悸がする
- 息がしにくい・胸がつかえる
- めまいがする
- 汗をかく
- 吐き気がする
- 震えがでる
- コントロールを失って気が狂ってしまうのではないかと思う
- 自分が自分でないような気がする
- 死ぬのではないかと思う
このような感覚に襲われたら、早めに医療機関に相談することをおすすめします。
パニック障害が疑われる場合の診療科を教えてください。
パニック障害が疑われる際には、精神科か心療内科に相談しましょう。パニック発作は心筋梗塞の症状に似ているため、はじめはほとんどの方が循環器科など内科を受診されます。しかしパニック障害ではいくら検査しても内科的な異常は見つかりません。検査で異常が発見されないと、治療にも取りかかれず発作のときに感じるつらさを周りの方に理解されにくくなります。こんなことで受診するなんて、とためらわれる方もいますが、1度精神科あるいは心療内科を訪れることで治療への道が開かれるケースも少なくありません。
パニック障害の治療方法を教えてください。
パニック障害の治療では、薬物治療と精神治療を行います。薬物療法で使用するのは抗うつ剤と抗不安剤です。SSRIと呼ばれる抗うつ剤は、飲み続けることによって徐々に効果が出てくる薬です。治療薬としてよく使われていますが、早い効果を求める場合は抗うつ剤ではなく抗不安剤を投与します。ただし抗不安剤には耐性や依存性があるので、注意が必要です。長期にわたって予防的に使う場合は抗うつ剤、緊急対応的に使うには抗不安剤という考え方が基本的です。精神治療にはさまざまなものがありますが、近年では認知行動療法がよく用いられます。具体的には医師との会話を通じて自分の不安がどのくらい現実的なものなのかを考え、より現実的な行動はどのようなものかを検討するものです。そののち検討された行動を実行に移す際、患者さんが不安になりそうな状況に少しずつ直面していくことを段階的暴露といいます。不安になって症状が出てきていた場面で適切な行動を繰り返すことにより、自信を生じさせ不安を起こりにくくすることが目的です。治療期間の長さは医師とよく相談のうえ、患者さん個人の状態に応じて決定します。特に薬物治療は中断すると具合が悪くなるケースが少なくないため、薬の減量や中断には医師の判断と観察が必要です。
編集部まとめ
突然強烈な不安感に襲われ動悸や呼吸困難が起こり死ぬのではないかという恐怖を覚えるパニック発作が連続するとパニック障害と診断されます。
本人にとっては大変な苦しみですが、内科の検査を受けても異常は見られず、原因がわからずにさらに苦しむケースも少なくありません。電車の中や人混みなどでパニック発作に似た症状が出た場合は、精神科か心療内科の受診をおすすめします。
パニック障害は誰でもなりうる、れっきとした心の病気です。患者さん本人と周囲の方が、そのことをしっかりと理解することが治療への第一歩となるでしょう。
周りの方が患者さんに接するときは、決めつけや安易な慰めを言わず、まずは患者さんの話を傾聴し、安心感を持ってもらうことが大切です。